部屋を掃除しているとき、壁の隅や床の端に、いつ付いたのか分からない小さなシミを見つけることがあります。多くの場合はただの汚れだと見過ごしてしまいがちですが、そのシミが特定のパターンや場所に集中している場合、それはゴキブリの存在を示す重要なサインかもしれません。彼らは移動する際に、様々な痕跡を残していくのです。ゴキブリが残すシミには、大きく分けて二つの種類があります。一つは、糞によるものです。これは既に述べた通り、黒い点状のシミとして現れます。特に、壁と床が接する巾木の上や、部屋の隅などに、黒いインクを飛ばしたような小さな点が連続して付着している場合、そこがゴキブリの通り道、いわゆる「ゴキブリロード」になっている可能性が高いです。彼らは同じルートを繰り返し通る習性があるため、糞も同じような場所に蓄積していくのです。もう一つは、彼らが排出する体液や、体を擦り付けた際の汚れによる、不規則な形の茶色い擦り跡です。これは「スメアマーク」とも呼ばれ、ゴキブリが頻繁に通る壁や、潜んでいる隙間の入り口付近によく見られます。特に湿度の高い場所を好むため、水回りの壁や配管の周りなどで見つかることが多いです。このスメアマークは、糞の痕跡とセットで発見されることも少なくありません。これらのシミを探す際は、普段あまり目のいかない場所を重点的にチェックすることが重要です。家具の裏側、クローゼットの内部、キッチンの棚の奥など、暗くて掃除が行き届きにくい場所をライトで照らしながら観察してみてください。もし、明らかに不自然なシミの連なりや、特定の場所への集中が見られたら、それはゴキブリの存在を強く疑うべき状況です。一見すると些細な汚れに見えるシミが、実は見えない敵の活動記録だったということもあり得ます。部屋からの静かなメッセージを、見逃さないようにしましょう。